
『Lui』は、ホームサーバと小型軽量のリモートアクセス端末「PCリモーター」で、さまざまなデジタルコンテンツやPC上のアプリケーションを遠隔で利用することができるソリューション。例えば、リビングルームのホームサーバPCを、ベッドルームや居間から遠隔操作して好きなコンテンツを楽しんだり、あるいは外出先で公衆無線LANなどを介して、PCリモーターでメールチェックやブログ更新をはじめ、ホームサーバPCのコンテンツやアプリケーションを利用したり・・・。高性能デスクトップPCを自由に持ち運ぶような感覚で、距離やロケーションを超えた活用を実現してくれます。
国際的に標準化が進んだPCは、他社との差別化ポイントが築きにくくなっています。そこで「他に先駆けて、PCの進化形を築いていきたい」という思いを抱いたのです。PCの利用状況を見渡した場合、家電品との距離は益々縮まっていますが、録画画像はHDDレコーダに、また写真や音楽ファイルはPCに、とさまざまなデジタルコンテンツがそれぞれの機器に分散しているという現状があります。そこで、家庭内のデジタルコンテンツをまとめて管理し、宅内外のロケーションを選ばず、いつでも好きな時に好きな場所で享受できるまさにユビキタスな環境を築きたい、と考えたのです。幸い、ホームサーバPCをリモートアクセス端末から遠隔操作する「リモートスクリーンテクノロジ」や、複数のハイビ

ジョン番組を同時に録画/配信するための「マルチレコードキャストテクノロジ」、24時間・安定稼働を実現する「ハイリライアブル・デザイン」など、NECはそれを実現するためのさまざまなコア技術を確立してきました。また他方ではブロードバンドバックボーンや宅内ワイヤレスLANの普及など、PCや家電品をネットワークでつなぐための通信インフラや文化も醸成されてきました。つまり、私たちが誇る要素技術とお客さま環境の状況を踏まえ、これまで存在しなかった新しい製品カテゴリを築こうと考えたのです。
いままで世の中に存在していない、まったく新しいカテゴリを創出するわけですから、「先手必勝」といいますか、市場に対する先行者メリットを発揮したいと考えました。したがって少数のコアなマニア層ではなく、より広いお客さまを対象にブランドイメージを定着させ、その波及力をさらにビジネスユースへと広げていきたいと考えました。具体的にはお客さまを8つのクラスタに分類したグループインタビューなどによって、実際の利用シーンを想定。その中から、求められる機能を探ってスペックを確定していきました。
一方、エンジニアは常に最高スペックを追求したいわけですが、それを「売れるもの」にするためには、機能とコストのバランスをとりながら、ターゲット層のハートにヒットする「商品」に落とし込んでいかなければならないのです。また、お客さまの利便性を考えれば、『Lui』につながるTVをはじめとする既存の機器を将来も使い続けられる継続性、さらに今後新しい機器をつなげて拡大が図れるスケーラビリティの両方を保証しなければいけません。そんなマーケティング的な発想と、「最高のものを創りたい」というエンジニアの意思や思いを、ひとつに統合することに気を配りました。
先ほど申し上げた「先行者メリットの獲得」という意味からも、2008年4月の市場リリースを掲げ、そこに向かって一丸となって走り出しました。2007年10月にテクノロジデモを行い、同12月に商品コンセプトとその新ブランドを発表。そして翌4月の新商品発表・発売と3段階の導入ステップを踏むことで、市場の期待感を呼ぶこともできました。もちろん、当初から市場投入時期を宣言したことで、自ら開発期間に縛りをかけたわけですが、そのプレッシャーが高い瞬発力を生み出してくれました。
また『Lui』では、実際のデータ格納や処理はホームサーバPCが担っており、PCリモーターは、ホームサーバPCの中身をブラウザ上で表示するためのデバイスなんです。つまりPCリモーターの画面は、サーバの中で画面イメージをキャプチャーして圧縮送信しているのです。そんな、いわゆるシンクライアントのメリットを生かして、PCリモーターの小型軽量化

を図ることもできました。実際、10.6型ワイドのノートPC型PCリモーター『Lui RN』はバッテリー込みで約649g、ポケットサイズの『Lui RP』は約249gという驚異的な軽さを実現しました。さらにデータはすべてホームサーバPCに載っているので、万一PCリモーターを壊したり、なくしたりした場合にも、大切なデータはしっかり守られるのです。
幅広いコンシューマをターゲットとした『Lui』は、遠隔からの接続を容易にすることもポイントでした。そこで、PCリモーターとホームサーバPCを接続する際に、PCリモーターのIPアドレスを確認するために、「メール交換方式」という仕組みを用いました。これは、ネットワークに接続するたびに動的に割り当てられるPCリモーターのIPアドレスをPCサーバに認識させるために、接続の際にPCリモーターからホームサーバPC宛てに、PCリモーター自身のIPアドレス情報を含むメールを送信するものです。そのおかげで、毎回IPアドレスが変わってもスムーズなリモート操作が実現するわけです。目下NTTが進めているNGN(Next Generation Network) サービスが本格化すれば、IPアドレスも固定化されるので、さらに瞬時でつながり使い勝手も格段に進化しますね。
また、データの蓄積・処理がローカルにあるかネット上にあるかも、今後のネットワーク・インフラの普及によって変わっていくでしょう。つまり、回線の伝送能力や信頼性がさらに向上すれば、必ずしもサーバを自宅におく必要はないのです。データやアプリケーションはネット上のどこかにあり、ユーザはネットを介してそれを自由に使いこなす、いわゆるクラウド・コンピューティング的な活用も図れます。そして最終的にユーザ側に残るのは、ユーザーインターフェースの部分です。ここでは、さらに徹底した操作性や使いやすさを追求していきたいですね。
私たちの事業部は若い人財が多く、これまでの枠や常識にとらわれない自由な発想で、「PCの進化形」を追求しています。これからも、自由で柔軟な思考で古い殻を打ち破る、そんな若い人たちを歓迎したいと思います。
ブランドイメージを決定する大きな要素であるネーミングに当たって念頭においたのは、「短く覚えやすいこと」でした。ノートPCも、そんなコンセプトから“The Life(生活・人生)”に当たる仏語“La Vie”と命名された、という経緯があります。
そこで今回は仏語・三人称の与格、つまり「彼に/彼女に」、あるいは「彼」を強める強勢形である“Lui”と名づけられました。一人称「私」の“Me”や“Moi”、二人称「あなた」の“Te”、“Toi”ではなく、あえて三人称にしたのは、ユビキタス時代にふさわしく「より広い外の世界とつながること」を意識したからです。ロゴタイプも直線的ですっきりとしたものにして、今後も広がるラインナップの中で、どんな筐体デザインにもマッチするシンプルさを目指しました。











